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吸入ステロイド薬

はじめに
吸入ステロイド薬とは

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吸入ステロイド薬の歴史
 1948年の事、米国メイヨー ・ クリニックの医師ヘンチは急性リウマチで苦しむ13歳の少女に最後の手段として当時認可されていなかったコーチゾン(ステロイド)を内服投与したところ、翌朝少女はベッドの横でダンスを踊っていまた。この逸話はニューヨーク ・ タイムズに "奇跡の薬" として取り上げられました。

 1950年にステロイドは喘息治療にも応用され著効を示しました。 ヘンチはノーベル生理学医学賞を授賞し、ステロイドの卓越した有効性が示されました。

 ところが、日を置かずしてステロイド薬の副作用である満月顔貌(ムーンフェイス)や骨粗鬆症などに苦しめられる結果となりました。

 吸入療法が始まったのは1961年のデキサメタゾンが最初で本格的な吸入療法が普及したのは1967年のベクロメタゾンの登場からでした。

 ベクロメタゾンの抗炎症作用はデキサメタゾンより600倍強力で非常に有効性の高いものでした。

 病態生理の解明が進み1990年代初めには喘息という病気が「気道の閉塞による急性疾患」 から 「気管支の粘膜に起きる慢性の炎症」という風に概念が大きく変わり、 吸入ステロイド薬中心の治療方針に変更され喘息における吸入ステロイド薬の使用は大きく増え、 それに反比例して喘息による不幸は大きく減少しました。

 吸入ステロイドの歴史はその後抗炎症作用がベクロメタゾンの2倍で全身性の副作用も低いドライパウダー製剤のプロピオン酸フルチカゾン(商品名:フルタイド)が発売されその後ブデソニドのドライパウダー (商品名:パルミコート)も承認されました。 2007年にはオルベスコ(商品名)とアドエア(商品名) が発売されました。

 強力な抗炎症作用を持つステロイドは、副作用が心配されるものの、吸入で使えば直接気道内に投与されるので少量ですみ、また、局所的であるため全身的な副作用は少なく安全性の面からも有用性が高く、日の喘息治療にはかかせないものとなっています。

ステロイド吸入後のうがい
40a.png 吸入ステロイドの副作用としては口腔カンジダ症、嗄声(させい:ハスキーボイス)などですが、うがいで予防できます。

 うがいの仕方は吸入直後の上を向いたうがいと正面を向いた口腔内洗浄の両方を2回以上行って下さい。

吸入ステロイドの新処方
 最近では吸入ステロイドは気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)で処方されるだけではなく、なかなか治らない咳嗽 (がいそう) で肺癌や肺結核でもないと診断がついた場合、 ステロイド吸入薬を使用して患部の炎症をおさえる事で咳を鎮めるという治療方法がみられるようになりました。

 慢性の咳には喘息、胃食道逆流(胃液が食道に逆流する現象で、食道の迷走神経が刺激されて慢性咳嗽の原因となる)、後鼻漏(慢性副鼻腔炎などで鼻汁が咽・喉頭に滴下して慢性咳嗽の原因となる)や薬の副作用などがありますが、原因がはっきりしていない慢性咳嗽での吸入ステロイド療法は良い成果が期待できるようです。

妊娠時の喘息治療
 「妊娠したらどんな薬も飲まない。」とほとんどのお母さんは思われる事でしょう。

 もちろんその事はとても大事なことですが、母親が喘息の場合、生まれた赤ちゃんが低体重児である割合は増えます。

 もちろん喘息の程度にもよりますが、これは母親が喘息で低酸素状態になっていると赤ちゃんの脳と体も酸素不足になるためで、 赤ちゃんに十分な栄養と酸素をあげるためには妊娠中でも喘息の治療は続けたいものです。

 妊娠中の使用薬剤を安全性の順番から A,B,C,D,X の5つに分類されたものを私たちは参考にしていますが、 幸いにしてランク Bの評価を得て安全性が確認されたブデソニド (商品名:パルミコート) がありますので主治医の指示に従って下さい。