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潰瘍性大腸炎とクローン病

はじめに
潰瘍性大腸炎とクローン病とはsakura92a.jpg

 炎症性腸疾患(IBD)には大きく分けると潰瘍性大腸炎とクローン病があります。潰瘍性大腸炎もクローン病も元々欧米に多くみられ、日本では1970年代まではまれな疾患でした。けれども1970年代以降には急に多くなり、その後年々増え続け、これからも増えていくだろうと予測されていますので、決してまれな疾患ではなくなっています。我が国でのIBDの患者数は10万人は軽く越えていて、両疾患の比率は約3:1くらいで、潰瘍性大腸炎の患者数の方が多く報告されています。
 どちらの疾患もはっきりとした原因はわかっていなく、過去に遺伝要因説、免疫異常説、環境因子説などがありましたが、現在ではさまざまな要因が複雑にからみあって発症するのではないかと考えられています。
 両疾患とも現在の医学では完全に治る事もない病気であるため国の特定疾患(難病)に指定されています。けれども近年治療薬や治療方法の研究も進み、多くの患者様では適切な治療により、いわゆる寛解期といわれる安定した状態を長く保つことで普通の日常生活が送れるようになりました。

潰瘍性大腸炎

 潰瘍性大腸炎は主に大腸の粘膜が赤く腫れてただれた状態になります。腹痛や下痢、粘液便や血便、また排便のトラブルなどがあります。腹痛の原因としては炎症部を便が通る時の刺激や便を送り出す腸の動きによって起きてしまいます。
 また、大腸においては本来水分を吸収して便を整える働きがありますが、その機能が低下して下痢になったり、炎症部位の粘膜がはがれたり潰瘍部から膿が出たりして出血したりすると粘液便や血便になります。そして直腸での炎症では排便の調節が難かしくなります。
 発病の男女比はほぼ同じで、発症は20歳代に多くみられます。

クローン病

 アメリカのクローン医師らが1932年に初めて報告したことからクローン病と呼ばれています。
 クローン病は主に小腸や大腸に症状は表れ、炎症部位の粘膜が傷付いて潰瘍や腹痛、下痢、血便、また体重減少や発熱などの症状が出てきます。進行すると潰瘍は粘膜層を通り越して筋層までおよぶため、腸管に孔(あな)が開き、腸管と腸管や腸管と皮膚が孔でつながってしまう瘻孔(ろうこう)とよばれる症状や、炎症をくり返すことで腸管が狭窄し、狭窄部が詰まると閉塞を起こすことがあります。
 また、クローン病による炎症は口から肛門まで消化器のどの部位にも生じる可能性があります。
 クローン病治療の目的も寛解に導き、そして寛解期を維持することになります。発病の男女比は2:1で男性に多く、発症のピークは男性で20~24歳、女性では15~19歳となっています。

治療

 潰瘍性大腸炎の治療には薬による内科的治療(薬物療法)と外科的治療がありますが、基本的には内科的治療が行われます。クローン病では薬物治療とエレンタールなどによる栄養療法が中心になります。その内科的治療でうまくいかない時は、外科的治療が行われます。
 内服薬:潰瘍性大腸炎もクローン病も5-ASA(5-アミノサリチル酸)製剤が使用されます。5-ASA製剤にはサラゾスルファピリジン(SASP)、商品名ではサラゾピリン錠などやメサラジン(ペンタサ錠やアサコール錠)が使用されます。メサラジンはSASPの有効成分(5-ASA)のみを薬剤にしたもので、ペンタサとアサコールの違いはアサコールの方は下部消化管に到達してから有効成分を放出するので下部消化管に病変のある方には期待される薬剤です。炎症の強い場合はステロイドの内服薬も処方されます。また必要に応じて免疫調整薬や免疫抑制薬も処方されます。
 外用薬:SASPやステロイドの座薬やメサラジンやステロイドの注腸剤など。
 抗TNF-α抗体:炎症性腸疾患の患者さんでは白血球が産生するTNF-αというサイトカインが増えていることがわかっていますので、それを抑える薬も使用されることがあります。
 血球成分除去療法:炎症性腸疾患では白血球が腸の粘膜内で悪影響を与えていると考えられていますので、一部の血液から、活性化した白血球を取り除くという方法が行われることがあります。」

日常生活の注意

潰瘍性大腸炎⇒

ituu92b.jpg 過労や睡眠不足や心理的なストレスは再熱や悪化の原因になることがあります。強い食事制限は特にありませんが、腸に負荷のかかる刺激的な香辛料や薬味、アルコールや炭酸飲料、また、消化されにくく大腸を刺激する食物繊維の多いものは控えるようにしましょう。コーヒーなどの刺激物も良くないと言われていますが腸管の炎症が強い時期(活動期)でなければ、節度ある飲用であれば問題ないと言われています。

クローン病⇒

tabako92c.jpg クローン病も過労や過度のストレスで増悪することもあるため、疲れをためないようにして下さい。食事での注意も潰瘍性大腸炎と同じですが、クローン病では低脂肪食で消化吸収の良いものが基本になります。
・喫煙は症状を増悪させることも報告されていますので、禁煙が必要になります。

妊娠と授乳

sinnsatu92d.jpg 潰瘍性大腸炎もクローン病も妊娠中でも服用できる薬はあります。けれども薬剤の変更が必要な場合もあり、妊娠を希望される場合は必ず主治医に伝えておいて下さい。男性患者さんの場合、サラゾスルファピリジン(商品名:サラゾピリン錠)の服用により精子の数が減少しますので、男性の場合もご自分の希望は主治医に伝えるようにして下さい。サラゾスルファピリジンも約3ケ月服用を中止することで精子の数はほぼ回復するようです。授乳に関しては、薬剤は母乳中に移行することがわかっていますから、薬の服用中の授乳についても、主治医に相談するようにして下さい。

一口メモ

girl92e.jpg難病とは:
 難病とはいわゆる「不治の病」ということになるのですが、その時代その時代で難病であるかそうでないかは変わってきます。かつて、結核も難病と言われていましたが、医学の進歩と共に不治の病ではなくなりました。けれども炎症性腸疾患のように、いまだ完治は難しい疾患も多く、これらは難病と呼ばれ、申請することにより医療費の助成を受けることができます