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ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)

ピロリ菌とは

pk1.jpg ピロリ菌は胃の出口(幽門=ピロリ)辺りの粘膜に住みつく、らせん形の桿菌(細長い棒状の菌)です。 本体の長さは約4ミクロン(4/1000mm)で2~3回ゆるやかに右巻にねじれています。 一方の端にべん毛(細長いしっぽのようなもの)が4~8本ついていて、そのべん毛をスクリューのように回転させながら胃の粘膜上の粘液の中を自由に動き回ります。
べん毛を逆回転させればバックもできるのです。
 さまざまな菌は胃の強い酸の中でやられてしまうのですが、ピロリ菌は、強い酸からも胃を守る働きがある表層粘膜の中で動き回るので、胃酸攻撃にあわずに生きることができ、またピロリ菌が持っているウレアーゼという酵素によって胃の中にある尿素をアルカリ性であるアンモニアに変えて胃酸を中和することができるので、胃の中でも生きられるのです。

ピロリ菌感染

 ピロリ菌に感染していても、ほとんどの人は自覚症状もなく健康に暮らしています。けれども、ピロリ菌に感染すると胃の粘膜に炎症を起こすことが確認されていて、感染が長く続くことで、胃粘膜全体に広がり慢性胃炎になり、慢性胃炎が長期間続くと胃の粘膜がうすく やせてしまう萎縮が進んで萎縮性胃炎となり、胃液が十分に分泌されなくなって食不 振や胃もたれの症状があらわれることがあります。さらに、萎縮性胃炎の患者さんの一部は胃がんにまでなってしまうこともあり、ピロリ菌の除菌でがん発生率をおさえたという報告も上げられています。そのため今まで保険では胃潰瘍や十二指腸潰瘍などにしか認められていなかったピロリ菌の除菌は、2013年2月からはピロリ菌感染者の慢性胃炎に対しても保険適応が拡大されました。
 胃潰瘍や十二指腸潰瘍に関しても患者の90%以上がピロリ菌陽性とも言われています。
 ただピロリ菌が陽性でも潰瘍にならない方もいらっしゃいますから、ピロリ菌だけがピロリ菌に関連する疾患の原因とはいえず、体質やストレス、喫煙、アルコールなどの他の因子も深く関係していると考えられていますが、現実にピロリ菌感染者が胃潰瘍、十二指腸潰瘍、萎縮性胃炎を引き起こし、その一部が胃がんに進行していますので、1994年にはWHOではピロリ菌を「明らかな発がん物質」と認定しています。

ピロリ菌感染経路

pk2.jpg ピロリ菌は歯垢やだ液などから検出されていて、また幼児期には感染しやすいこともあり、母から子への口移しによる感染が多いと言われています。また糞便からもピロリ菌は検出されますので、上下水道が完備されていない時の日本では飲料水からの感染も考えられています。コップの回し飲みやキスなどでは感染しないと考えられていますし、現在の日本では生水を飲んでピロリ菌に感染することはありませんが、日本の感染率は先進国の中では際立って高く、60歳以上の60%以上がピロリ菌に感染しているとも言われてい ます。

ピロリ菌の検査方法

 ピロリ菌の検査方法には内視鏡を使う方法と使わない方法があります。内視鏡を使う方法では胃炎や潰瘍などの病気があるかどうかも直接調べることができます。内視鏡時に胃粘膜を少し採取し、組織鏡検法では胃の粘膜組織に特殊な染色をしてピロリ菌を顕微鏡で探します。 欠点としては時間がかかることが上げられます。 培養法では採取した胃の粘膜をすりつぶして、ピロリ菌の発育環境下で5~7日培養して判定します。欠点としては培養しにくい菌もあることです。
 迅速ウレアーゼ法では、ピロリ菌が持っている酵素(ウレアーゼ)の活性を利用して調べる方法です。採取した粘膜を特殊な反応液にいれて、反応液の色の変化でピロリ菌の有無を判定します。感度は80%台と言われています。
 内視鏡を使わない方法に抗体法があります。 人はピロリ菌に感染すると菌に抵抗するために抗体を作ります。 血液や尿に存在するこの抗体の有無を調べます。 簡便ですがこちらも感度は80%台と言われています。 内視鏡を使わない方法で高感度で簡便なものに抗原法と尿素呼気試験法があります。抗原法は糞便中のピロリ菌の抗原の有無を調べ、尿素呼気試験法はピロリ菌が尿素をアンモニアに変えるときに二酸化炭素を発生しますので、尿素入りカプセルを使用する前と服用後の吐く息の二酸化炭素の量を調べることで、ピロリ菌の有無を確認します。
pk3.jpg 感染判断では静菌作用のある薬剤服用時は診断ができないので、服用終了後2週間以上経っていることが必要になります。 また、陰性と言われても疑わしい場合は、初回時と異なる検査方法で1回に限り再度調べることができます。
 ウレアーゼ法や尿素呼気試験では商品名で言うとタケプロンやパリエットやネキシウムなどのPPI服用時にはピロリ菌に感染していても偽陰性となることがあるため、ガスターなどのH₂ブロッカーに切り替えて3~4週してから検査するのが望ましいと言われています。

一次除菌と二次除菌

 除菌は2種類の抗生剤(アモキシシリンとクラリスロマイシン)とPPIを朝夕7日間服用します。除菌を成功させるには、まず禁煙し、指示通りきっちり服用することですが、きっちり服用していても除菌成功率は75~80%です。 
 除菌できなかった場合は、抗生物質のクラリスロマイシをメトロニダゾー ルに変更して二次除菌を行います。メトロニダゾールはアルコールとの併用で、嘔気などを起こしてしまうので、禁酒をして行います。二次除菌の成功率は80~85%ですので合わせると95%以上の成功率になりますが、二次除菌でも除菌出来なかった方の3次除菌は保険適応外のため自費となります。
pk4.jpg 服用中の副作用としては、1~2割の方に軟便~下痢の症状が出ていますので、腸の弱い方は初めから整腸剤を併用すると良いでしょう。服用中の発疹やかゆみはアモキシシリンによるペニシリンアレルギーの薬疹である可能性が高く、そんな時はすぐに医師に連絡して早期に服用を中止する必要があります。

除菌終了後には・・・  

 除菌終了後は4週間以上経ってから判定を受けることになります。日本での除菌後の再感染のリスクは年に1%以下といわれていますが、除菌終了後も定期的な検査はお勧めしたいものです。