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吸入療法

はじめに

kyuunyuuki.jpg  喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)は共に患者数は多く、いずれも吸入薬治療はとても重要で有効な治療法です。けれども吸入薬にはさまざまなタイプがあるため正しく使用されていなかったり、処方はされていても使わないでいたりで確実な治療効果があげられない問題も指摘されています。そのため患者さんには吸入デバイス(吸入器具)の使い方を十分理解してから持ち帰っていただく事は重要で、また吸入薬の意義と重要性を解っていただく事で、吸入療法に対する患者様の対応も前向きになります。結果、治療効果も高まっていく事になりますから、薬局での対応がとても大切になってくるのです。

吸入薬の意義と重要性

seki.jpg 吸入薬の最大の利点は患部に直接薬剤を到達させることにあります。そのため飲み薬などに比べ薬剤が少量ですみ、全身性の副作用も少ないことにあります。
気管支喘息はアレルギー性の気道の炎症が主体で、そのため最強の抗炎症薬はステロイドなのでステロイドによる治療が有効です。けれどもステロイドには様々な副作用がありますので、そこで局所療法である吸入療法が重要となってくるのです。吸入薬は局所的なので全身性の副作用は少なく、ごく少量で効果があります。
 内服薬ならばmgの単位で服用しなければならないステロイドも吸入薬ならばμg(1μg=1/1000mg)の単位で効くことになります。
 一方COPDは喫煙による肺胞破壊と気道狭窄による疾患なのでCOPDの治療の基本は気管支拡張薬となりますが飲み薬や貼付剤では動悸やふるえといった副作用が吸入薬より強くでやすいこともあり、こちらも気管支に直接薬剤を届ける方法が選ばれています。

吸入療法のみの限界

 吸入薬のみで治療ができるかというとそうではありません。吸入療法のみでは治療ができない場合には内服薬などの他の治療が必要になります。たとえば吸入薬では薬が届かない場合や吸入薬としては作れない薬剤や全身に薬剤が必要な場合などがあります。
 また内科治療には多剤併用療法というのがあり1つの薬剤を増やしていくよりは異なる作用の薬剤を追加することで効果を強め、反対に副作用の方は減らせるという基本がありますから、多剤をうまく組み合わせて治療はされることになります。
 それにCOPDでは吸入で気管支を拡張させるのみでは対症療法の範囲であって、テオドールなどのようなテオフィリン製剤で呼吸筋や横隔膜の筋力増強効果を期待したり、気道の傷害による喀痰の排出困難の場合にはムコダインのような粘液調節剤のカルボシステインが処方されることもあります。粘液調節剤はCOPDの急性増悪を抑える効果があることが研究で明らかにされています。

吸入薬の配合剤

tanabata.jpg 喘息の方の長期の管理には吸入ステロイド薬(ICS)が処方されていますがICSのみでは症状を十分におさえられない場合には長時間作用性のβ2刺激薬(LABA)という気管支拡張薬が処方されます。中等症~重症患者においてはICSを増やすよりはLABAを追加するほうが効果は高いと言われています。
 このように有用なICSとLABAを1つの吸入デバイスに入れてしまえば便利であり喘息管理のさらなる改善が期待されるということでICS/LABAの配合剤が開発されました。またICSとLABAを組み合わせることでそれぞれの作用も強めることも報告されています。
 注意すべきことは、優れた効果を表すICS/LABAですが、本来ICSのみでコントロールできている方には推奨されるものではありません。

喘息とCOPDの吸入薬の違い

hiyoko.jpg 喘息ではすべての症例で吸入ステロイドは積極的に処方されますがCOPDではⅢ期(高度の気流閉塞など)以上で増悪を繰り返す場合に推奨されます。一方、気管支拡張薬には既にお伝えしているLABAの他に長時間作用性抗コリン薬(LAMA)があります。喘息とCOPDではどちらの吸入薬を選ぶかという事になりますがLAMAの保険適応はCOPDのみです。
COPDではLAMAは治療初期から使用されます。LAMAは気道の平滑筋細胞に働きかけて強力な気管支拡張効果を1日以上続けます。COPDの病態は副交感神経の緊張による気道の平滑筋の収縮なので、副交感神経の伝達物質であるアセチルコリンを遮断するLAMA(スピリーバー他)が使用されるのです。ただし、COPD治療の大原則は禁煙である事は忘れないでください。元来、抗コリン薬とβ2刺激薬はお互いの作用を強める相乗効果がありますから場合によっては併用療法も行われます。
 普段LABAやLAMAでコントロールできている症状も発作が起こることがあります。その時には短時間作用性β2刺激薬(SABA)や短時間作用性抗コリン薬(SAMA)が使用されます。
 喘息の発作ではSABAが使われますが、楽になるからといってSABAに依存してしまうと喘息症状を悪化してしまうので、原則として1日に使用できる4回までは守ってください。

吸入薬の副作用

neko.jpg 吸入ステロイドで一番多い副作用は嗄声(させい)といって声がかすれたり、口腔や咽頭のカンジタ症ですから、副作用予防のためには吸入後は必ずうがいをして下さい。うがいはブクブクを2回とガラガラを2回行うと良いでしょう。β2刺激薬の副作用では動悸やふるえなどがあり、抗コリン薬は緑内障の方は原則禁忌であり前立腺肥大症の方では尿が出にくくなる事があるので注意が必要です。
 妊婦さんの喘息発作は母体にも胎児にも悪影響を及ぼしますから日常から吸入薬にてコントロールする必要がありますから、妊婦さんでも使用できる吸入薬もありますので、ドクターにご相談ください。