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肺高血圧症

はじめに
肺高血圧症とは

 血液の循環には全身を循環する体循環と心臓と肺を循環してガス交換を行う肺循環があります。
その肺循環の中で心臓から肺に血液を送る血管(肺動脈)の内腔が何らかの原因によって狭くなって血液が通りにくくなり、肺動脈圧が高くなった病態を肺高血圧症といいます。
 肺高血圧症の原因は心筋症や心臓弁膜症などの心臓の病気や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの肺の病気や、遺伝的なものが関与しているとされるものなどさまざまですが、代表的なものは「肺動脈性肺高血圧症」と「慢性血栓塞栓性肺高血圧症」です。

92cat009.jpg 肺の動脈圧は全身の血圧よりかなり低く、安静時の平均肺動脈圧、つまり(最高肺動脈圧+最低肺動脈圧)÷2が25mmHg以上の場合には肺高血圧症と診断されます。
肺高血圧症の患者さんでは、その平均肺動脈圧が100mmHg以上になることもあり、放置すれば生命を長く保つ事は難しく、難病(特定疾患)に指定されていますが、この10年ほどの間に新薬も登場し、治療域も広がってきています。
 肺高血圧かどうかは問診や血液検査や胸部エックス線検査、心電図、心エコーなどでほぼ診断はされますが、確定診断には肺動脈圧の測定が必要です。肺の血圧はカテーテル検査で肺血管抵抗値を算出して調べられます。


  初期の症状としては坂道や階段で息切れがしたり、疲れやすく、動悸や立ちくらみやめまい等を起こし、激しい運動をしたときに失神することもあります。病気が進行してきて、右心不全になると顔や足のむくみなどの症状も現れるようになります。
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 そもそも全身を流れて戻ってきた血液は右心房に入り、右心房から右心室に、右心室から肺動脈を経て肺へ送られ、肺では二酸化炭素を放出して酸素を受け取るというガス交換をして、酸素を得た血液は肺静脈を通って心臓の左心房に入ります。左心房から左心室に血液は流れ、左心室より全身に血液は流れます。
 肺に血液を送り出す右心室は全身に血液を送り出す左心室と違って、元々は大きな力を必要としないので高い圧力に耐えられなく、肺高血圧になると心臓の右側(右心系)にかかる負担は大きくなり、右心系の働きは次第に低下して右心不全の症状が現れるようになるのです。92cat006.jpg

肺高血圧症の治療

92cat008.jpgすでにお伝えしたように肺高血圧症も種類があって、それぞれのタイプがありますから、治療方法も異なってきます。
心臓の左側(左心)の病気や肺そのものに疾患がある場合は、まず元の病気の治療が行われます。血栓(※参照)が肺動脈に詰まって心臓から肺へ血液を送りにくくなる血栓塞栓性肺高血圧ではヘパリンの注射やワルファリンを内服する抗凝固療法が行われます。
また、何らかの原因で肺動脈が狭くなり、血液が通りにくくなった状態では、薬によって血管を拡げる血管拡張剤が使用されます。日本で治療に使われている主な薬はシルデナフィル、タダラフィル、ベラプロスト、ボセンタン、アンブリセンタンなどの飲み薬で、効果が不十分であれば注射薬(エポプロステノール)が必要となります。
低酸素は肺血管を収縮させてしまうので、低酸素状態では酸素吸入療法が行われたりします。
最大限に治療を行なっても病状が進んでいく場合には、肺移植も考慮されるのですが、日本ではなかなかドナー(臓器提供者)がみつからないのが現状です。
※:肺の血栓は器質化血栓といって大きな血の塊ではなく、小さな血栓が肺に流れ着いて、血管壁にくっついて結果として肺動脈の内腔にできてしまう膠原線維の膜です。  このような余計な膜によって血液の流れはさえぎられてしまうのです。