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前立腺がん

はじめに
前立腺とは

 前立腺は男性のみに存在し、膀胱の下にあり尿道のまわりを取り囲んでいるクルミ大の臓器です。そこに発生する前立腺がんはもともと欧米に多く、日本では少ないがんと考え られていました。けれども高齢者の増加や検診の普及や診断技術がすぐれてきたことなど から「前立腺がん」と診断される人が急増していて、今後も増え続けると予測されています。 前立腺がんの90%以上が60歳以上の方ですが、50歳代ごろから現れはじめるため、 50歳をすぎて排尿に異常を感じたら、早めの受診がお勧めです。けれども、症状が現れ るのはある程度進行してからのことですので、定期的に検診を受けて早期に発見するよう にしたいものです。

92cat0018.jpg前立腺がんになる原因としては加齢による性ホルモンのバランスのくずれや食生活の欧米化や遺伝的素因など種々の要因が加わって発生するといわれています。 前立 腺がんが進行してくることで尿道が圧迫されて尿の出が細くなったり、残尿感があったり 何度もトイレに行きたくなったりと、前立腺肥大症に似た症状がみられます。けれども前立腺 肥大症は転移することはありませんが、前立腺がんの方は進行してくるとリンパ節や骨などに 転移して背中の痛みや腰の痛みを引き起こしたり、尿や精液に血液が混じることがあります。

 一次検査でPSA(後述)を測定して、高いという事になれば二次検査でPSAの再検査や直腸 診や超音波検査があります。直腸診は指を肛門から直腸に入れて直腸の壁越しに前立腺に 触れて大きさや硬さなどを調べます。前立腺肥大症では弾力があるのに対し、進行したがん では石のような硬さのしこりがあります。また、超音波検査では、肛門から指くらいの太さの 超音波発信装置を直腸に挿入し、前立腺の内部を画像で確認します。これらの二次検査で がんの疑いがあれば、生検といって前立腺に針を刺して組織の一部を採取して調べること で、がん細胞があるかないか、またあれば悪性の度合等を確認します。
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 PSAは前立腺細胞だけが作るたんぱく質で、がんが増殖すると血液中に流れ出るため、PSA が基準値の4ng/mLを超えていれば専門医による検査が必要です。けれどもPSA値は前立腺 肥大症や前立腺炎などによっても高くなりますから、PSAの結果だけではがんかどうかは解り ません。 PSA検査は治療後の経過観察にも使用されます。

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 前立腺がんの細胞は男性ホルモンの影響をうけて増殖するため、この男性ホル モンの分泌や働きをおさえる薬は有効で95%の人はこの治療がよく効くと言われ ていて、早期がんから進行がんまで幅広く使用されています。 男性ホルモンは脳の視床下部からでる性腺刺激ホルモン放出ホルモンの一種で あるLH-RHにより下垂体が刺激を受けて精巣(睾丸)と副腎から分泌されます。 精巣からの男性ホルモン(テストステロン)の分泌をおさえるには去勢術といって 男性ホルモンが多く作られる精巣自体を摘除する方法がありますが、4週あるいは 12週に1回皮下注射するLH-RHアゴニストも同等の効果があるとされているので、 一般には注射による治療を希望される方が多いようです。 LH-RHアゴニストというのは、下垂体を持続的に強く刺激することで逆に下垂体の 反応を麻痺させて、テストステロンの合成や分泌を低下させます。 一方、副腎で分泌される男性ホルモン(副腎性アンドロゲン)はLH-RHアゴニストや 去勢術では抑えられませんので、抗男性ホルモン剤といって前立腺がんの細胞内 での男性ホルモンの働きを抑える飲み薬もあり、注射と内服の併用療法はより高 い効果が期待できます。