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心不全

はじめに
心不全とは

 心不全患者は日本で160万人いると言われています。 86-1a.gif
心不全とは一見すると病名のように思えますが実は病名ではなく、「心臓のポンプ機能(心臓が収縮と拡張をくり返して全身に血液を送り出す働き)が低下して必要とされる十分な量の血液を送り出せなくなったという状態」を示しています。
この状態が急に起きる場合を急性心不全といい、心臓のポンプ機能が徐々86-2b.gifに低下してくる場合を慢性心不全といいます。その多くをしめる慢性心不全では気付かないうちに進行していることがあり、早く発見して治療を開始することで軽症の状態を維持することも可能ですので、年のせいとあきらめずに気になる症状があれば受診するようにしてください。

心不全の症状

 心臓疾患といえば胸の痛みとかが頭に浮かんでくるのではないでしょうか。けれど心不全では全身に血液を十分に送り出せないわけですから、だるい、疲れやすい、 息切れがする手足が冷えるといった症状を主に表します。
それにあわせて、心不全では心臓へ戻る血液も十分に戻らなくなるため、体のあちこちに血液がうっ滞し、足のむくみ、肝臓のむくみなどの症状が表れます。また、日中は全身に血液が流れるため腎臓への血液が減って尿量は減り、反対に夜間の就寝中は日中より腎臓へ流れる血液は増えるので日中は尿量は少ないのに夜間には尿の回数も量も増えるということもあります。

慢性心不全の重要度の分類

 慢性心不全の重症度の分類にニューヨーク心臓協会(NYHA)の心機能分類がありますが、簡便であるため日本でもよく用いられています。
Ⅰ度 通常の身体活動では症状なし
Ⅱ度 通常の身体活動でも疲労や動悸や呼吸困難や狭心症症状がある
Ⅲ度 通常の身体活動もかなり制限される
Ⅳ度 安静時にも呼吸困難になる

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BNP

 循環器の患者さんの血液検査ではよく見かけられるもので心不全の状態を把握するのに重要な検査なので覚えておくと便利です。
BNPは日本で発見されたホルモンで、最初ブタの脳から精製されたことから脳性ナトリウム利尿ペプチドとも言われますが、脳からではなく心臓(主に心室)から分泌されるホルモンです。このホルモンには利尿作用や血管拡張作用によって体液量や血圧を調整して心臓の負担を軽くするように働きます。
BNPは自覚症状や身体にみられる症状より先に数値に変化が表れます。BNPの基準値は18.4pg/mL以下で示されていますが、100pg/mL未満なら心臓病は表れていないことが多く100pg/mL以上ならば精密検査が必要というのが一つの目安です。

心不全の治療

Ⅰ 生活習慣の改善
①塩分をひかえる
②禁煙をする 86-3c.jpg
③アルコールは適量までにおさえる 86-4d.gif
④血圧や血糖をコントロールする


Ⅱ 薬物療法 (下記薬剤名はすべて商品名です)


 ACE阻害薬、ARB→ ACE阻害薬ではレニベースなどが、また、ARBではブロプレスがあります。これらは血圧を下げる薬ですが心臓を守る働きがあるため心不全の自覚症状のない時期から使用されます。


 β遮断薬 → メインテートとアーチストが推奨されています。心拍数が多くて、なおかつ血圧の高い方ではこれらが高くない方に比べて心血管疾患のリスクが約3倍に上昇すると言われていて脈を整えて血圧を下げるこのβ遮断薬には心臓の負担を減らし、心不全の悪化を防ぐ働きがあります。


 利尿薬 → ダイアートやラシックスがそうで体にたまった水分を尿として排泄させることで、むくみやうっ血した状態を改善します。


アルドステロン拮抗薬 → 降圧利尿薬として位置づけされています。アルドステロンは副腎皮質ホルモンで、アルドステロンをおさえることで血圧を下げて心臓の負担も軽くします。アルダクトンA、セララがそうです。


 強心剤 → 心臓のポンプ機能を強める作用があります。けれど、この薬は心臓に働け働けというようなものなので、最近では重症の場合にのみ使用される傾向があります。また強心剤の代名詞のようなジギタリス製剤も副作用のはき気や不整脈などの問題から、以前ほどは使われなくなりました。