pt85.jpg

夏ばてと漢方

はじめに
夏ばてと漢方とは

 今年の夏も暑かったですね。夏の疲れはでていませんか。

85-1aa.gif 夏ばてといえば「だるい」「食欲がない」という症状が表れるのではないでしょうか。 夏ばてには清暑益気湯(セイショエッキトウ)などが処方されるようですが、今回は夏ばてに限らずよく処方されるものにしぼってお伝えします。

だるいときに効く漢方

十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)85-2aa.gif
 10種類の生薬の組み合わせで構成されています。補気剤の基本である四君子湯と補血剤の基本である四物湯に、さらに気血を強めるためにケイヒとオウギを加えたものです。 補剤とは不足したものを補う漢方薬の総称で、低下している体の機能を回復させて、気力や体力を補うことを目的としています。気力や体力が不足した状態ではだるいという訴えも多く、そんな時は補剤が有効で、十全大補湯は体力や気力の低下に加えて貧血気味、お肌もカサカサという体全体の衰えに使用されます。また、十全大補湯は放射線や化学療法など抗がん剤治療による体力の低下時や抗がん薬の副作用の軽減にも使用されます。


補中益気湯(ホチュウエッキトウ)
 十全大補湯と並んで、補気剤の代表的な漢方です。体力や気力が低下して寝汗をかくような方に使用されます。こちらも10種類の生薬で構成されていますが基本の組み合せはニンジン+オウギです。ニンジンとオウギは相乗作用で体力や気力を充実させてだるさを取るという組み合わせになっています。
ニンジンとはオタネニンジン(高麗人参)のことで、オウギとはマメ科のキバナオウギなどの根を乾燥させたものです。

食欲がないときに効く漢方

六君子湯(リックンシトウ)
 8種類の生薬から構成されています。六君子湯の作用機序は科学的にも証明されていて、胃の 運動促進作用や食欲亢進ホルモンのグレリンを分泌亢進させるなど多くの作用があります。
すでにお伝えした十全大補湯や補中益気湯にも食欲不振を改善する働きがあります。

漢方関連事項

エキス剤と煎じ薬image048aa.gif

 エキス剤は煎じ薬より劣るように思われている方もおられるかもしれませんが、エキスただ、エキス剤は煎じた液の水分をとばして製剤にしていますので、ものによっては揮発成分や香りが失われてしまいます。それは煎れたてのコーヒーとインスタントコーヒーの違いに似ているとも言われています。


舌診(ぜっしん)92cat0015.jpg

 舌診という言葉は皆様もよくご存知だと思います。ただ舌を見るだけで病名が解るものではありませんが、舌の色、厚さ薄さ、苔など漢方で証を決める時の判定のひとつとして使われることがあります。



甘草(カンゾウ)85-3aa.gif

 漢方薬の約7割が甘草を含む製剤です。甘草はマメ科の植物の走根(地表を横走りする根)で、甘みが強く薬用以外に醤油などの甘味料としても広く利用されています。
甘草とはそういったもので安全ではあるのですが、量が多くなると問題で、特に2種類以上の漢方を長期服用されている高齢の方などでは副作用の「偽アルドステロン症」に注意する必要があります。

85-5aa.gif偽アルドステロン症 ☛ アルドステロンは副腎から分泌されるステロイドホルモンで、血圧を上昇させる働きがあり、血液中のナトリウムイオンの吸収を増加し、カリウムイオンの排泄を促す作用があります。偽アルドステロン症とは、実際には血中のアルドステロンは増えていないのに、高血圧や低カリウム血症やむくみ、手足のだるさ等の症状を示してしまいます。そのアルドステロンのような作用は、甘草の成分であるグリチルリチンにより引き起こされてしまうのです。