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白色血栓と赤色血栓

はじめに
白色血栓と赤色血栓とは

 血管内の血液が何らかの原因で塊を作るのですが、それを血栓といい、血栓が血管を塞ぐことによってそれより先に血液が流れなくなってしまい虚血や梗塞が引き起こされることを血栓症といいます。 また、その血栓がはがれて別の場所の血管を塞ぐことは血栓塞栓症といいます。
 このように血栓には悪いイメージがあるのですが、実は血栓とは人体にもともと備わっている止血のしくみで、たとえば血管が傷ついたとすると、血管は収縮するとともに血液中の血小板がすぐさま傷口にくっつきます。 くっついた血小板は活性物質を出して周囲の血小板と互いにくっつきあって塊を作り、とりあえず傷口をふさぎます。 けれども、そのままでは不安定なのでフィブリンによってより強く固められ、強固な血栓を形成するのです。 
 この止血の仕組みは病的な血栓につながってしまうのです。

抗血栓薬

 抗血栓薬(血液凝固阻止薬)は血栓の種類によって使い分けられます。
血栓にはその色調から白色血栓と赤色血栓があります。 動脈は血流が速いのでフィブリンを作る凝固因子は流されやすいので、動脈の血栓は白色血栓と呼ばれる血小板主体のものになります。
 アテローム血栓を例にとると、アテロームとは粥腫(じゅくしゅ)で血管の壁に悪玉コレステロールなどがたまり、お粥のようなドロドロとした固まりを作るのですが、アテロームが壊れた部分に血小板が粘着、凝集することで血小板主体の白色血栓が作られ、そこで閉塞を起こしたり血栓の一部が剥がれて塞栓を起こしたりします。
 一方、心原性といわれる血栓は心臓でできた血栓で多くは心房細動によるものです。 心房細動とは心房が規則正しく収縮できなくて細かく震えてしまう状態で、そのため血液はよどみ(うっ血し)、血管内膜では抗血栓作用は低下するといったことが起こるため血栓ができやすくなります。 また心房細動疾患は高齢者に多く、脱水で血液粘度が高く、さらに血液は固まりやすくなります。 ここで出来た血栓はフィブリンが赤血球を取り込むため赤色となるので赤色血栓と呼ばれています。
 このように血小板主体の白色血栓とフィブリンや赤血球中心の赤色血栓ではそれを予防する抗血栓薬は使い分けられます。

抗血小板薬と抗凝固薬

66-3a.png 抗血小板薬は白色血栓を予防します。 バイアスピリン、バファリン、プラビックス、パナルジンやプレタール等があります。
 抗凝固薬は赤色血栓を予防します。 ワーファリン、プラザキサ、リクシアナ、イグザレルト等があります。

抗血小板薬のメカニズム

 血小板は直径2~5μmの円板状の細胞で普段は血管壁の近くをなにもしないで流れています。 けれども、ひとたび血管が傷つくと血小板は働きはじめ傷口に凝集するのです。 抗血小板薬はその血小板の反応を抑えることで血栓を予防します。
 アスピリンはアラキドン酸からトロンボキサンA₂という強力に血小板を活性化させる物質に変わる反応を助ける酵素の一つであるシクロオキシゲナーゼ1(COX1)を阻害することで血小板の働きを抑えるのです。 
 また、プラビックス、パナルジンは両方とも同じ作用で血小板の活性化をおさえ、プレタールは別の作用で血小板の活性を予防します。

抗凝固薬のメカニズム

 最初にお伝えしたようにフィブリンが凝固反応を強めるので、最初にそのフィブリンの形成を抑えることが目的となります。 そもそもフィブリンは可溶性のフィブリノゲンをトロンビンが不溶性のフィブリンに変えます。 そのためトロンビンの働きを抑えれば良いわけで、プラザキサ、リクシアナ、イグザレルトがそれにあたります。 ではよく処方されるワーファリンはというと作用機序が全く異なり肝臓における凝固因子合成を阻害することで凝固を予防します。 つまり、酸化型のビタミンKが還元型のビタミンKに変わる過程を阻害し、ビタミンK依存性の凝固因子の合成を抑えることで凝固が進まないようにするものなので、ワーファリンを服用しながら一方ではビタミンKの多く含まれる食品(納豆、クロレラ、青汁等)を摂取していると薬の効果は減弱されてしまいます。

出血リスクの予防71-4a.gif

 いわゆる血液サラサラ製剤の問題点としては出血があります。 けれども鼻血に驚いて薬を勝手にやめてしまった結果、脳梗塞や心筋梗塞を発症させてしまうという事もあります。鼻血のような粘膜や皮膚の軽い出血であれば鼻をやさしくかむ、歯ブラシを柔らかいものに変えるといった工夫をしてみて下さい。 
 とは言っても重大な出血もあり、血便や血尿といった内臓からの出血はすぐに主治医に連絡して下さい。 また最も予防したい脳内出血ですが、それを予防するにはやはり血圧の管理が大切になります。 血圧は低いほど脳内出血のリスクは下がるため抗血栓療法中の血圧目標値は130/80mmHg未満ともいわれています。
 また、血糖のコントロール、禁煙、節酒にも配慮するようにして下さい。

休薬期間57-3aa.gif

 手術や内視鏡検査の前(あるいは後も)には、出血を予防するために服用を中止することがあります。 最近では抜歯時には圧迫することで止血が可能なため、休薬はしない場合が多くなっています。
 休薬期間については各病院等で決められていますので、医師の指示に従ってください。