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家庭血圧測定

はじめに
家庭血圧測定とは

 日本高血圧学会では2009年に「高血圧治療ガイドライン2009」を発表し、24時間にわたる血圧のコントロールを強調するとともに、診察室での血圧値に加えて家庭で患者自らが測定した血圧値を診療方針の判断に加えることを推奨しました。なぜなら、診察室での血圧値では白衣現象ということもあり、また仮面高血圧や早朝高血圧などを見逃すことになり、結果として過剰な治療あるいは不十分な治療になるおそれが あるからです。
 このたび、そのガイドライン2009を受けて「家庭血圧測定の指針」の改訂版として第2版が出ましたのでその内容を中心にお伝えします。

血圧測定の歴史とリバロッチ・コロトコフ法

80-1a.gif 4000年ほど前にすでに中国では脈の重要性を感じ、過剰に塩分を摂取すると硬脈になり脳卒中にかかりやすくなると述べられたそうです。
 1628年、イギリスの医師によって初めて血圧という概念が生まれ、実際に初めて血圧が測定されたのはそれから約100年後のことでした。それはウマの動脈での実験でしたが、人で行われるようになるにはさらに100年も経ってからのことです。その後さまざまな経過をたどりながら1896年、血圧の測定部位として現在用いられている上腕でのカフ(腕帯)圧迫法がイタリアのリバロッチによって発案され、1905年にロシアのコロトコフによって聴診法が提唱されて以来、血圧測定法はこの100年、本質的にはその姿を変えていません。
 聴診法(リバロッチ・コロトコフ法)というのは、リバロッチのカフを上腕に巻き急速にカフ圧を上昇させて血流をさえぎります。カフ直下の動脈上に聴診器を当てて音を聞きながら圧力計の水銀を徐々に下げていくと、血液が心臓の拍動に合わせて断続的に流れ始めます。このときに発生する血管音をコロトコフ音といい、コロトコフ音が発生し始めた時のカフ圧を最高血圧、コロトコフ音が消えた時のカフ圧を最低血圧としています。
 リバロッチ・コロトコフ法の時代から長きに渡り続いた水銀血圧計を用いた聴診法も近年の電子血圧計の普及や水銀の環境汚染の問題などから血圧測定法も急速に変化しつつあります。

オシロメトリック法による血圧測定

80-2a.gif 聴診法によらない血圧測定で、現在家庭でよく使われている電子血圧計はオシロメトリック法が主流になっています。上腕にカフを巻きそこに空気を送り込んで血管をしめつけて、いったん血流を止めます。そのあと徐々にゆるめていくと血液の圧力が血管を圧迫しているカフの圧力を上回るときが最高血圧で、急激に小さくなったときが最低血圧になります。オシロメトリック法も歴史があり、20世紀初頭と、比較的古くから行われていて、さまざまな改良を重ね今のようになりました。

自由行動下血圧測定(ABPM)

 今日なお、高血圧診療において血圧の情報は診察室血圧が基準とされています。しかし、診察室血圧を基準にすることはかなり以前から疑問視されていて、1940年には自己血圧測定の概念を実際の診察の現場に広く取り入れ、診察室血圧と自己測定血圧の較差を明らかにしました。1969年には初めてABPMの結果が示され、人の血圧が時間とともに著しく変動することを明らかにしました。
 今日一般に行われているABPMはある1日の15分ごと、30分ごとの血圧値が得られます。ただ、ABPMは4000万人といわれる膨大な高血圧患者すべてに行うことは現実的ではないため、特殊な形の高血圧の診断、難治性高血圧の診断、病的低血圧の診断、夜間血圧の評価、血圧短期変動性の評価といった状況において行われることが多いようです。

家庭血圧測定のメリット

 診察室の血圧に比べて測定する頻度も多く、白衣現象はありません。朝と夜に2回測定することで服用した薬の効果が続いているのかそうでないのかがわかります。また家庭で血圧を測ることは医療や健康管理への患者自身の積極的な参加であって、結果としてきっちり服用できることにもつながります。さらに食事療法、運動療法の介入も高くなり、血圧の良好なコントロールにとつながるのです。

早朝高血圧

 早朝高血圧には二つのタイプがあって、夜間低値の血圧が早朝覚醒前後に急激に上昇して高血圧に至るモーニングサージと夜間に血圧が昼間より0〜10%しか下がらないノンディッパーや夜間に血圧が上昇するライザーにみられる早朝高血圧があり、どちらも心血管病になりうるタイプと考えられています。ちなみに血圧は夜間に普通は10〜20% 下がり、それをディッパーといいます。

血圧の測定の基本80-3a.gif

 血圧測定の基準位値は右心房です。血圧計の説明書通りにカフを巻いて測定するとそうなります。右心房より10cm下位で測定すると約7mmHg高くなり、10cmくらい上で測ると約7mmHg低く測定されます。測定時、メリヤスのシャツやワイシャツなど薄地の着衣なら問題ありませんが、厚手のシャツや上着の上にカフを巻くと、大きな誤差がでます。
 カフは硬性と軟性があって硬性の方が装着は便利ですが肥満者では十分にフィットしないので軟性を用いて下さい。小児においては小型を用いることが望ましいです。家庭用の自動血圧計では利き腕でない側にカフを巻くことが一般的ですが、左右差を調べ大きく差がある場合は、高い方の腕で測定するようにして下さい。なお、20mmHg 以上の差があるのであれば、低い圧の側の動脈に狭窄などがあることもあり、主治医に必ず伝えて下さい。一般的には測定条件をできるかぎり一定にするため、左右どちらの腕で測るか決めておくようにして下さい。

測定回数と記録

92cat008.jpg 朝・晩それぞれ1〜3回ずつ原則連日測定します。薬を服用しないで様子見の時や薬の変更時は少なくとも週5日、血圧安定期は週3回、正常な血圧の人でも健康管理の観点から月1回でも測定することが望ましいとされています。
 血圧の記録は年、月、日、時間と共に脈拍も記録するようにしてくだい。3回測定した場合は、今までは平均を記載する等と言われていましたが今は3回とも記録するよう勧められています。

減塩のすすめ

80-4a.gif さまざまな理由で塩分をひかえるように医師から伝えられている方も多いことでしょう。
日本人の食塩摂取量は1日11〜12gと言われています。ところが医師からは塩分(食塩)は6g/日以下の指示が多く、食事のめやす量は難しいものがあります。(以下参照)

①食品にはナトリウム含有量として表示されています。食塩に換算するには次の式にあてはめて下さい。

食塩相当量(g)=ナトリウム(mg)×2.54÷1000

②塩分量のめやす

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