pt79.jpg

糖尿病腎症

はじめに
糖尿病腎症とは

 日本の透析患者数は約30万人で、透析になる原因が糖尿病であるという糖尿病腎症が全体の半数近くを占めています。 糖尿病の三大合併症としては腎症、網膜症、神経症がありますが、今回は腎症についてお伝えします。

糖尿病腎症の原因となるもの70-179a.gif

 糖尿病腎症は糖尿病、つまり高血糖状態の持続によって腎臓の細胞の代謝異常を引き起こし、腎臓の細小血管にも障害がおきて腎機能が低下します。障害を起こすメカニズムにもいろいろとあるのですが、近年AGEというものが注目を集めています。 AGEは糖とアミノ酸(蛋白質)が結合した糖化蛋白で、酸化ストレス(後述)が関与して血管に障害をおこしてしまうのです。
 AGEはアマドリ化合物から形成され、アマドリ化合物の1つがHbAlcなのです。
 糖尿病腎症に関わる原因としては糖尿病以外に高血圧(糸球体高血圧)、肥満、脂質異常、動脈硬化、遺伝、喫煙などがあります。

酸化ストレス

 生体にとって好ましくない状態で、活性酸素や喫煙は酸化ストレスを増加させるといわれています。そもそも、人体には不要な活性酸素を除去する仕組みも備わっていて、活性酸素が組織障害を起こさないようにコントロールされているのですが、過剰なブドウ糖はその代謝で活性酸素を発生させるとともに、活性酸素除去システムの機能を低下させ、その結果糖尿病患者の体内では活性酸素による組織障害が起こりやすい状態になっています。 これを酸化ストレスと呼んでいます。 79-1aa.gif

アルブミン尿

79-2aa.gif  糖尿病腎症は腎臓の細小血管に障害が生じアルブミン尿(蛋白尿)を伴う腎機能の低下が起こる病態ですが、治療によってアルブミン尿が低下すると腎臓の予後がよいことが証明されています。つまり、アルブミン尿を低下させること自体が腎臓の機能を保つのにいかに重要であるかということになります。尿蛋白が陰性でも微量アルブミン尿が陽性の場合があるので、早期腎症における尿中アルブミンの測定は重要です。 ただ、アルブミン尿は日中変動が大きく、午前や午後や夜間や、また日によって変わるので3回検査をして2回以上基準にあてはまるものを早期腎症と診断されます。
 2型糖尿病患者においてインスリン抵抗性がアルブミン尿に関与することが指摘されていますが、やはりなんといっても高血糖、高血圧がアルブミン尿への進展に大きく関わってくるので、血糖管理に加えて血圧の管理も重要になります。

腎不全への移行の阻止86-4d.gif

 末期腎不全への移行を阻止するには早期に腎症を発見し早期に治療を開始することです。
 糖尿病腎症では動脈硬化病変も強いため脂質の管理も必要です。 禁煙は当然のことで喫煙が糖尿病腎症を進行させることが実証されています。 血圧の管理の目標値は一般の人よりきびしく、130/80mmHg以下で、蛋白尿が1日1g以上では125/75mmHg以下とされています。 脂質異常に関しては悪玉コレステロール(LDL―C)は120mg/dL未満で可能ならば100mg/dL未満に目標をおくべきだとも言われています。

透析療法

 腎臓の機能が低下してくると老廃物がたまり尿素窒素(BUN)※₁やクレアチニン※₂の値が高くなりカリウム(K)などの電解質が蓄積したりして体がむくんだり、全身がだるくなったり食欲不振などの尿毒症症状や肺うっ血や心不全をきたし呼吸困難などの症状が現れてきます。 そのような状態を食事療法や薬でコントロールできなくなったときには透析療法が必要になってきます。透析療法には週3回通院して行う血液透析と毎日自宅で行う腹膜透析とがあります。

※₁BUN : 蛋白質がエネルギーとして使われたとき燃えかすとしてアンモニアが生じます。 アンモニアは体の中で二酸化炭素と結びついて無害化されますが、その結果生じるのがBUN(尿素窒素)です。 BUNは腎臓から尿に排出されるのですが腎臓に障害があると血液中に増えてきます。

※₂クレアチニン : こちらも蛋白質が使われたあとに生じる老廃物で腎臓から尿に排出されます。 腎臓の糸球体に障害があると十分に排出されないので血液中に増えてきます。



92cat0018.jpg☆お知らせ:血糖コントロールの指標となるHbAlcは現在、日本だけで使用されているJDS値ですが、今年4月からは国際基準値(NGSP値)にかわります。そのため正常値の指標であるJDS値の5.8は国際基準値の6.2となります。混乱を避けるため、しばらくは併記される予定です。