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糖尿病とインクレチン

はじめに
糖尿病とインクレチンとは

 66-1a.png新薬のインクレチン製剤に関しては、NHKの「ためしてガッテン」で放映されてから、患者様からの問い合わせもある薬です。いささか「魔法のような薬」のようなイメージを持たれた方もありますが、 魔法ではないにしても、2型糖尿病患者における新しい可能性が開かれたことは確かです。 そもそも、インクレチンって何なのでしょうか?

インクレチンとは

 インクレチンとは消化管ホルモンで、食後の血糖値が上昇しそうなときにインスリンの分泌を増やしたり、またグルカゴン (膵臓のα細胞から分泌され る血糖上昇ホルモン) の分泌をおさえたりして、 血糖の上昇を抑制する物質で小腸から分泌されます。

 インクレチンは、主に上部消化管のΚ細胞から分泌されるGIPと下部消化管のL細胞から分泌されるGLP-1との2種類があります。


66-2a.pngインクレチンは少ししか食事を摂取しないときはGIPやGLP-1の分泌は少なく、その結果インスリン分泌も少なくなり、反対にたくさんの食事を摂取し た場合は分泌が増加され、インスリンの分泌も増加します。

 インクレチン製剤が魔法の薬であるというイメージのゆえんは、 インクレチ ンによるインスリン分泌促進にはグルコース濃度依存性があり、つまりインクレチンは食後の血糖値が上昇しているときにだけ作用し、血糖値が正常 値のときは働かないため、血糖値を下げ過ぎないという事で糖尿病治療ではしばしば問題になる低血糖症状が起きにくいことが特長であるからなの です。

 けれども、ここで注意しなければいけない事は、血糖値の値によってはインクレチン製剤のみでは不十分である場合、他剤(たとえば、アマリールやグ リミクロンやオイグルコンなどのSU剤) との併用で重篤な低血糖が出現する可能性があります。重篤な低血糖は、高齢の方やSU薬の量の多い方や 腎機能の低下している方が特に要注意です。

 また逆のパターンもあります。後述しますが、インクレチン製剤には皮下注射も発売されていて、 従来のインスリン治療をされていた方でのインスリン 製剤からの切り替えでは、高血糖に注意が必要となります。

インクレチン製剤

 インクレチンを糖尿病治療薬に応用するにあたっての最大の課題は、インクレチンの多くは生体内ではDPP-4という蛋白分解酵素で分解されて不活性 化されてしまうことでした。 そこで開発されたのがジャヌビアやグラクティブやエクアやネシーナのようなDPP-4の活性を抑制するようなDPP-4阻害薬と、 ビクトーザ注射やバイエッタ注射のような、 DPP-4によっても分解されにくいインクレチンアナログ製剤(GLP-1受容体作動薬)なのです。

 注射薬がGIPではなくGLP-1に着目したのには理由があります。それは、GLP-1の方には食欲抑制作用をはじめ、GIPにはない多様 な働きがあるからなのです。

血糖降下薬から糖尿病治療薬に・・・

66-3a.png 糖尿病治療において、 合併症の発症や進展を抑制するためには血糖コントロールは重要です。過去1~2ヶ月の血糖平均値を反映するHbAlc値を良好な範囲に維持することに加えて、食後の過血糖や血糖値の日内変動が少な いことや低血糖がないことが必要になります。

 けれども良好な血糖を継続するにあたって障害の1つになるのは、膵臓のβ細胞が徐々に減少することです。 また、 肥満することによって起きる肥大化 した脂肪細胞からの動脈硬化をうながす因子が増加するため、体重をコントロールすることも必要です。それに加えて、コレステロール値に注意し血圧も 安定させて血管や臓器を守らなければいけません。

 従来の血糖降下薬である SU薬やインスリン製剤は血糖を下げるという作用は優れています。 けれども時に低血糖を招き、 食事療法が不十分だと体重 を増加させてしまいます。

 インクレチン製剤(錠剤)の血糖降下作用はSU薬より弱く、 インクレチンアナログ製剤もインスリン製剤に比べると劣ると思われるのですが、 単独での使 用では低血糖を起こしにくく、 食後の過血糖を是正し、体重増加も起こりにくく、GLP-1受容体作動薬においては、体重減少をも期待できるのです。 またインクレチン製剤は動物においては膵臓のβ細胞の保護作用や心筋保護作用も報告されていて、 いずれ人体においてもそういった報告が得られるのではないかと考えられます。インクレチン製剤はそういったいろいろな観点から、 糖尿病や糖尿病合併症を改善する治療薬へと夢が開けたように思います。

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