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アルツハイマー型認知症

はじめに
アルツハイマー型認知症とは

 認知症とは一旦正常に発達した知的機能が持続的に低下し社会生活に支障をきたすようになった状態をいい、常なる老化現象とは異なり、いろいろな原因から記憶障害とそれ以外の認知機能障害を呈する疾患です。現在の患者数は約300万人と見積もられていて、20年後には500万人に達するのではないかと憂慮されています。

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 認知症はその病態の違いからアルツハイマー型認知症、 脳血管型認知症、その他の認知症(レビー小体やピック病など)の3つに大別されます。
アルツハイマー型認知症は主に加齢が原因となって発症するもので現在、認知症の約2/3を占めています。


早期診断

61-2a.gif アルツハイマー型認知症も早期診断は重要で、適切な薬物治療やリハビリテーション、音楽療法、回想療法などを早期から開始することにより、その進行を遅らせることが可能です。

 認知症の疑いがもたれる徴候としては頻回の置き忘れや探し物、同じものを何度も買ってきたり、「あれ」「それ」といったような言い方が目に付くようになったり、以前より使っていた電化製品が使えなくなったりなどがあり、気になる事があれば早めに受診しましょう。

改訂長谷川式簡易知能評価スケール

 認知障害の診断の補助となる簡便な検査の1つに長谷川式があります。けれども同じテストを他の医療機関ですでに行っている場合は点数が高く出たり、うつ病の場合などでは反対に実際の能力より低く評価されたりしてしまう場合があり、注意が必要です。通常の教育歴のある場合で30点満点のところ、20点以下では認知症が疑われますが、年齢や教育歴などを考慮する必要があります。評価スケールの一部を取り上げてみます。

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アルツハイマー型認知症治療薬のメカニズム

 アルツハイマー型認知症では神経伝達物質であるアセチルコリンなどを分泌する神経細胞に変性・脱落が生じるため脳内のアセチルコリンが減少し、そのため様々な病態を表します。この病態に対して、アセチルコリンの分解を阻害する薬剤であるドネペジル塩酸塩(商品名:アリセプト)のみが、国内では「アルツハイマー型認知症の進行抑制」という適応で認可されています。
 海外ではアルツハイマー型認知症の病態にグルタミン酸という興奮性の神経伝達物質が神経細胞傷害に関与しているのではないかと考えられていて、米国ではアリセプトなどのアセチルコリンエステラーゼ阻害薬とグルタミン酸のもつ神経細胞傷害を保護すると考えられている薬剤との併用で効果がみられたことから、併用治療が盛んに行われているのですが日本では開発中の段階です。

アリセプト服用のポイント

1. 薬は服用して病気を治すという固定概念がありますが、アリセプトは病気そのものを治すものではありません。 けれども病気の進行を緩和し、 諸症状も緩和したりしますから、「表情が明るくなった。」とか「混乱することが減った。」と か「庭いじりなどをするようになった。」とかの変化もみられるようになります。 仮に症状がよくならないようにみえても、実際には症状の進行を遅らせている可能性もありますから、勝手に服薬は中止しないようにしてください。

2. アリセプト服用の開始は3mg/日からで、1~2週間後に5mg/日に増量になりま す。3mg/日では効果は期待できませんが、3mg/日である程度体が慣れることにより、吐気、嘔吐、食欲不振などの副作用を抑えるとこができるからです。

3. アリセプトの服用により吐気、嘔吐、食欲不振などの副作用が表れても多くの場合、継続することで慣れが生じて消失するのですが、強い吐気や嘔吐にはナウゼリン等の制吐薬が処方されたり、一定期間減量されたりします。

4. 服用を始めて、あるいは増量後2ヶ月以内くらいに軽度の興奮や焦燥が出現 する可能性があります。それはアセチルコリンの分解が阻害されることにより表れるものなので、アリセプトの一定期間の減量により対応されます。

5. 脳内のアセチルコリンがほぼ枯渇した状態(食事が全介助の状態になることが目安)では、アリセプトの効果を期待することが出来ないため、徐々に減量→中止となります。